警備入札案件とは、官公庁や公共施設が警備業務を外部に委託するため、競争入札を通じて業者を選定する調達案件のことです。
警備業は「継続的に発注が生まれる」「全国どの地域にも案件がある」という特徴から、官公庁入札の中でも参入しやすい業種のひとつです。しかし、どのような案件が存在するか・どこで公告を探せばよいか・参加するには何が必要か、といった実務的な情報が整理されていないまま動いている企業も少なくありません。
この記事では、警備入札案件の種類から主な発注機関、参加資格の取得方法、案件の探し方まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。
警備入札案件の種類と特徴

官公庁が発注する警備業務は、業務内容によっていくつかの種類に分類されます。入札に参加する前に、自社の対応可能な業務区分を確認しておくことが重要です。
有人警備(常駐警備・巡回警備)
施設に警備員を常駐させる、または定期的に巡回させるタイプの警備業務です。案件数が最も多く、合同庁舎・国有財産住宅・病院・学校などさまざまな施設が対象となります。
たとえば財務省関東財務局では、「領家住宅ほか1住宅 巡回警備業務」(公告日:令和8年3月5日、落札決定日:令和8年4月1日)や「松戸住宅ほか2住宅 巡回警備業務」(公告日:令和8年2月18日)など、住宅施設を対象とした巡回警備案件が継続的に公告・落札結果情報として公開されています。
機械警備(センサー・監視システム)
警備員を常駐させずに、センサーや監視カメラ、通報システムを活用して施設を守る業務です。有人警備より費用が抑えられるため、夜間や閉庁時間帯の警備として採用されるケースも多くあります。
施設総合管理に含まれる警備業務
清掃・設備管理・受付業務などとあわせて「施設管理業務」として発注されることもありますが、業務ごとに分離して発注される場合も多くあります。さいたま新都心合同庁舎1号館では、警備業務が独立した民間競争入札として発注され、落札金額は368,280,000円(税抜・警備業務分)、業務委託期間は令和5年4月1日から令和8年3月31日という大型案件でした(落札:全協ビル管理連合協同組合。清掃・電気設備は別契約)。
この事例のように、施設規模が大きい場合は数億円規模になることもあります。
主な発注機関と案件の傾向
警備業務を発注する機関は多岐にわたります。以下の表に代表的な機関と案件の特徴をまとめました。
| 発注機関 | 案件例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 財務局(国有財産関連) | 合同庁舎警備・住宅巡回警備・国有財産警備 | 全国各地に財務局・財務事務所があり案件が豊富 |
| 省庁・出先機関 | 庁舎常駐警備・夜間警備 | 中央省庁から出先機関まで幅広い |
| 都道府県・市区町村 | 役場・公共施設・学校警備 | 自治体ごとに入札参加資格が必要 |
| 独立行政法人・病院機構 | 病院・研究施設の常駐警備 | 24時間対応や資格要件が厳しい場合もある |
| 国立大学・公立大学 | キャンパス巡回・夜間警備 | 学期スケジュールに合わせた仕様設定が多い |
財務局の案件は、全国の財務局・財務事務所が管轄する国有財産(合同庁舎・国有住宅など)が対象となるため、地方の中小警備会社でも参入しやすい規模の案件が多いのが特徴です。関東財務局の公告情報には、「国有財産警備業務(群馬県前橋市堀越町外)」や「前橋地方合同庁舎警備業務」なども掲載されており、地域密着型の案件も多数確認できます。
入札参加に必要な資格・要件

警備入札案件に参加するには、いくつかの資格・要件を事前に満たしておく必要があります。
警備業法に基づく認定
警備業務を受注するには、都道府県公安委員会の認定(警備業認定) を受けていることが大前提です。認定を受けていない事業者は、そもそも警備業を営めないため、入札以前の問題となります。警備業法に基づく認定は、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に申請します。
全省庁統一資格(物品・役務)
国の機関(省庁・財務局・独立行政法人等)が発注する警備業務に参加するには、全省庁統一資格の取得が必要です。警備業務は役務区分の「役務の提供等」に分類されます。
主なポイント: – 有効期間は原則3年(3か年度ごと)。現行区分は令和7・8・9年度(令和7年4月1日〜令和10年3月31日) – 申請は「調達ポータル」からオンラインで可能 – 審査区分は「役務の提供等」を選択。警備業認定書の写し等を添付 – 定期審査と随時審査があり、随時審査で取得した場合は有効期間が3年より短くなる
物品・役務入札の仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
自治体の競争入札参加資格
都道府県や市区町村の発注案件に参加するには、各自治体への競争入札参加資格の登録も別途必要です。自治体ごとに申請時期・書類・審査方法が異なるため、参入を検討している地域の自治体の調達ページを確認してください。
仕様書で求められる要件
案件ごとの仕様書には、以下のような追加要件が設定されることがあります。入札前に必ず確認しましょう。
- 警備業法に基づく警備員教育の実施体制
- 資格保有者(警備員指導教育責任者など)の配置
- 緊急連絡体制の整備(24時間対応の可否)
- 過去の同種業務実績(○件以上、など)
入札公告から落札までの流れ

警備入札案件の一般的なプロセスを番号付きで整理します。
入札公告の確認
調達ポータル(政府電子調達システム)や各機関の調達情報ページで公告を確認する。公告には仕様書・入札参加資格・提出書類・開札日程が記載される。入札参加申請(競争参加資格確認申請)
一般競争入札の場合、公告で指定された期間内に参加申請書類を提出する。仕様書の精読・現場確認
現地確認(現場説明会)が設定されている案件では必ず参加する。警備員の人員配置数・勤務時間・緊急対応手順などを仕様書で詳細に確認する。入札書の提出
紙入札・電子入札いずれかの方法で、指定期日までに入札書を提出する。開札・落札者決定
最低価格落札方式の場合、入札参加資格を満たした業者の中で最低価格を提示した業者が落札。総合評価落札方式の場合は、価格だけでなく技術点も評価される。契約締結・業務開始
落札後は仕様書に従い契約を締結し、指定の委託期間から業務を開始する。委託期間は案件により異なり、1年契約から3年複数年契約まで幅がある(前述の合同庁舎管理案件では3年間の委託期間が設定されていました)。
警備案件の探し方|主な情報源

警備入札案件を効率よく探すには、複数の情報源を組み合わせることが重要です。
調達ポータル(政府電子調達システム)
国の機関が発注する案件のほとんどは、調達ポータルに掲載されます。キーワード検索で「警備」「警備業務」などと入力すれば、全省庁の警備関連案件を一括で検索できます。ただし、UI上のキーワード検索は絞り込み機能が限定的であるため、件数が多い場合の精査には手間がかかる点も覚えておきましょう。
各省庁・財務局の調達情報ページ
財務局の場合、各局ごとに入札公告・落札結果情報を公開しています。地元の財務局ページをブックマークしておくと、管轄内の案件をピンポイントで確認できます。
都道府県・市区町村の入札情報サービス
自治体案件は調達ポータルに掲載されないことも多く、各自治体のホームページや自治体が運営する電子入札システムを確認する必要があります。複数の自治体をカバーしようとすると、チェック先が増えて管理が煩雑になりがちです。
横断検索できる入札情報サービスの活用
調達ポータル・各省庁・自治体と情報源が分散しているため、複数機関を一元的に横断検索できる入札情報サービスを活用することで、巡回の手間を大幅に削減できます。業種・地域・キーワードの複合条件で「警備業務」案件だけを絞り込み、新着通知で見落としを防ぐといった使い方が有効です。
警備入札で勝率を上げるためのポイント

警備入札は案件数が多い反面、競合業者も多く参入している分野です。以下のポイントを押さえることで、受注につながる可能性が高まります。
価格設定の精度を上げる
最低価格落札方式の案件では、人件費・教育費・通信費・保険料といったコストを正確に積み上げた価格設定が求められます。低すぎる価格は最低制限価格制度(下回ると失格)に引っかかるリスクもあります。過去の落札結果情報を参考に、相場観を養っておきましょう。
実績と体制を仕様書に丁寧に示す
総合評価落札方式では、価格以外に「同種業務の実績」「警備員の資格・教育体制」「緊急時対応マニュアル」が評価項目になることがあります。自社の強みを具体的な数字・事例で示せるよう、提案書類を充実させることが重要です。
複数年契約案件を優先する
委託期間が複数年(2〜3年)の案件は、一度落札すれば安定した売上が見込めます。更新時の優位性も生まれやすいため、積極的に狙うべき案件タイプです。さいたま新都心合同庁舎の事例でも、3年間の長期委託契約が設定されていました。
地域の特性を把握する
財務局・出先機関・地元自治体など、地域ごとの発注傾向を把握することで、入札機会を計画的に確保できます。どのタイミングで公告が出るか(年度末前後が多い傾向)を把握しておくと、準備にゆとりが生まれます。
よくある質問(FAQ)
警備業認定なしでも官公庁の警備入札に参加できますか?
参加できません。警備業法により、警備業務を提供するには都道府県公安委員会の認定が必須です。認定を受けていない事業者は入札参加資格審査の段階で弾かれるため、入札を検討する前に認定の取得状況を確認してください。
全省庁統一資格は何年ごとに更新が必要ですか?
原則3年(3か年度)ごとの更新が必要です。現行は令和7・8・9年度区分(令和7年4月1日〜令和10年3月31日)が有効期間となります。定期審査で取得した場合は区分の満了日まで有効ですが、随時審査で取得した場合は取得時点から満了日までとなり3年を下回ることがある点に注意してください。
警備入札案件はどのくらいの頻度で公告されますか?
案件の規模・発注機関によって異なりますが、年度末(1〜3月)に翌年度分の公告が集中する傾向があります。複数年契約が終了するタイミングで次の公告が出るため、過去の落札結果情報から委託期間を確認しておくと、次の公告時期をある程度予測できます。
自治体の警備案件と国の警備案件で手続きは違いますか?
入札参加資格の種類が異なります。国の機関には全省庁統一資格、自治体にはそれぞれの競争入札参加資格が必要です。また、入札の方法(電子入札システムの種類)や書類の提出先も異なります。並行して複数の機関に登録しておくと、案件の選択肢が広がります。
施設管理と一括発注された案件に、警備会社単体で参加できますか?
案件によります。清掃・設備管理・警備を一括発注する案件では、複数の業種をカバーできる大手ビル管理会社が有利なケースもあります。一方、警備業務のみを分離発注している案件も多く、そうした案件に絞ることで中小の警備会社でも十分に競争できます。さいたま新都心合同庁舎のような大型案件は、協同組合などを通じた共同入札という選択肢もあります。
まとめ
警備入札案件は、合同庁舎・国有財産施設・病院・自治体施設など、発注機関が多岐にわたる業種です。まずは警備業認定と全省庁統一資格(または自治体資格)を整備したうえで、調達ポータルや財務局の情報ページから案件を探すのが基本的な流れとなります。
案件を効率よく探すには、複数の機関を一元管理できる仕組みを持つことが競合との差になります。調達ポータル・各省庁サイト・自治体サイトをバラバラに確認していると、案件の見落としや締切ミスにつながりかねません。
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