随意契約とは?定義・要件・金額基準をわかりやすく解説

随意契約とは サムネイル 入札の基礎

随意契約とは、国や地方公共団体が競争入札を行わずに特定の相手方を選んで締結する契約方式のことです。

公共調達では原則として競争入札が義務づけられています。しかし、すべての契約で入札を行うことは現実的ではありません。緊急対応が必要な場合や、特定の技術・資格を持つ事業者しか対応できない場合など、競争になじまないケースが存在します。随意契約はそうした例外的な状況に対応するための制度です。

この記事では、随意契約の定義・適用要件・金額基準から、一般競争入札との違い、実態・不正防止措置、受注側の実務上の注意点まで体系的に解説します。


公共調達における一般競争入札・指名競争入札・随意契約の分類図

随意契約と競争入札の違い

公共調達の契約方式は、大きく「競争入札」と「随意契約」に分かれます。競争入札にはさらに一般競争入札と指名競争入札があり、それぞれ目的と手続きが異なります。入札の種類全般についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

契約方式概要参加者の範囲
一般競争入札公告により広く参加を募り、最も有利な条件の者と契約資格を持つ不特定多数
指名競争入札発注機関が特定の事業者を指名して競争させる指名された数社
随意契約競争を経ずに特定の相手方を選んで直接交渉・契約任意に選定した1者(原則)

随意契約の最大の特徴は、競争の手続きを省略して特定の相手と直接交渉できる点です。これにより緊急性への対応や専門性の高い調達が可能になる一方、透明性の確保と公正性の維持が制度上の課題となります。

国の機関における契約方式の全体像は、環境省が公表する資料(国等の機関における契約方式の概要)にも整理されています。また、一般競争入札と指名競争入札のより詳しい比較はこちらの記事をご参照ください。


随意契約が認められる4つの要件

随意契約が認められる4つの要件をまとめたステップ図

随意契約は例外的な契約方式であるため、適用できる場面は法令・内規で厳格に限定されています。国立研究開発法人国際農林水産業研究センターの契約基準など各公的機関の規程では、おおむね以下の4つの場合に随意契約によることができると定められています。

① 契約の性質・目的が競争を許さない場合

特許権・著作権など特定の権利を持つ事業者にしか提供できない物品やサービス、独自の技術・製法に基づく製品の調達が該当します。競合他社では代替できないため、競争そのものが成立しないケースです。既存システムの保守・運用委託なども、他社への切り替えが困難な場合に該当することがあります。

② 緊急を要し、競争に付する時間的余裕がない場合

災害復旧工事や感染症対応など、即時対応が必要な事態が生じた際に適用されます。入札公告から開札まで一定期間が必要な競争入札を待てない状況が典型例です。

③ 競争に付することが不利と認められる場合

少額契約や、入札手続きにかかる事務コストが契約金額を上回るような場合が該当します。後述の金額基準はこの観点から設定されています。

④ 機密保持が必要な場合

調達の内容や相手方を公開することが国の安全保障や機密情報の保護に支障をきたす場合に適用されます。防衛関連調達などが典型です。


随意契約の金額基準

「競争に付することが不利な場合」に対応する要件では、具体的な金額の上限が定められています。少額の調達まで競争入札を義務づけると、事務コストが調達金額を上回ってしまうためです。

各機関の規程によって細部は異なります。国立研究開発法人国際農林水産業研究センターの規程では、以下の金額基準が設けられています。

調達の種類随意契約が可能な上限額
工事・製造400万円以下
財産の買い入れ300万円以下
物件の借り入れ150万円以下
その他(役務等)規程による

地方公共団体では、この金額基準が国の機関と異なります。 随意契約の基準額の上限は地方自治法施行令の別表第5が団体区分別に定めており(令和7年4月1日施行の改正で引上げ)、各自治体はその範囲内で運用額を規程に定めます(出典:総務省)。

具体例として、群馬県富岡市は随意契約に関するガイドラインを独自に策定・公開しており(富岡市随意契約ガイドライン)、金額基準や運用手続きを明文化しています。発注機関ごとに基準が異なるため、取引先となる機関の規程を個別に確認することが重要です。

また、地方公共団体全体における入札・契約制度の位置づけは総務省の資料(地方公共団体の入札・契約制度の概要)でも確認できます。


随意契約の実態:会計検査院のデータから読む現状

会計検査院データで見る随意契約の実態を示す表

随意契約は例外的な制度のはずですが、実際には相当な規模で活用されてきました。会計検査院の検査報告によると、各府省等が締結した随意契約は平成17年度で約89,870件・総額約2.7兆円に達していました(出典:各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果)。

同データでは契約種類別の内訳も示されており、役務が件数・金額ともに最大で、件数ベースでは全体の6割弱(54.7%)を占めていました。清掃・警備・情報システム保守など継続的なサービス調達で随意契約が多く活用されていた実態がわかります。

さらに、企画提案競争(プロポーザル)を経て随意契約を結ぶ「企画随契」は件数ベースで全体の約1割にとどまり、大多数は競争手続きを一切経ない随意契約でした。

※上記データは平成17〜18年度のものです。近年の動向は会計検査院の最新報告書や総務省の公表資料で確認することをお勧めします。

こうした実態を踏まえ、国や各自治体は随意契約の適正化・競争入札への移行を継続的に推進しています。公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議の随意契約見直し状況フォローアップでは、各府省の取り組み状況が公表されています。


特例随意契約とは(研究開発機関向けの特殊制度)

一般的な随意契約とは別に、国立研究開発法人向けの「特例随意契約」という制度があります。研究開発成果の早期実現・向上を目的として、通常より高い金額帯でも公開見積競争を原則とした手続きで随意契約を締結できる仕組みです。

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の規程(特例随意契約)によると、対象は研究開発に直接関係する物品・役務・製造・賃貸借に限られ、1,000万円以下が上限です。

調達種類特例随意契約の対象金額
財産の買い入れ300万円以上〜1,000万円以下
役務200万円以上〜1,000万円以下
製造400万円以上〜1,000万円以下
物件の借り入れ150万円以上〜1,000万円以下

特例随意契約では、不正防止策と情報公開が制度的に義務づけられています。研究費の管理に携わるすべての職員への不正使用防止研修の受講義務、および契約締結後72日以内の契約概要公表が定められています。

この制度は国立研究開発法人特有のものです。研究機関・大学との取引を行う企業の担当者は、自社の調達先がどの制度を適用しているかを把握しておく価値があります。


随意契約における透明性確保と不正防止

随意契約は特定の相手方を選ぶ性質上、なれ合いや利益誘導が生じやすいリスクがあります。そのため、適正化に向けた措置が制度として組み込まれています。

情報公表の義務化

多くの機関で、随意契約の締結内容(相手方・金額・選定理由)を一定期間内にホームページ等で公表することが義務づけられています。特例随意契約では前述のとおり72日以内が目安です。自治体でも随意契約の情報公開は透明性確保の観点から推進されています。

事前審査と決裁プロセス

随意契約の締結には「なぜ競争入札によらないのか」の理由を文書化し、複数の関係者が承認する内部プロセスが一般的です。担当者単独で決定できる仕組みにはなっておらず、上位者の決裁を経ることが求められます。

随意契約見直しの取り組み

2006年以降、国は各府省に随意契約の見直し計画の策定と実施状況のフォローアップを求め、競争入札・企画競争への移行を促進してきました。これにより随意契約の件数・金額は大きく縮小しています。地方共同法人(国や地方公共団体が関与する法人)でも役務提供等の契約における随意契約ガイドラインが策定されており(地方共同法人 日本下水道事業団の例)、個別機関レベルでの整備も進んでいます。

随意契約の締結から情報公表までの適正化フローを示す図

受注側(企業)から見た随意契約の実務ポイント

随意契約は発注者側の制度ですが、受注側の企業にとっても理解しておくべきポイントがあります。

随意契約で発注してもらいやすくなる主な条件は以下のとおりです。

  • 独自技術・特許・著作権の保有:他社では代替できない強みがある場合、「競争を許さない」要件に該当しやすくなります。
  • 既存契約の継続性:すでに納入・保守を担っているシステムやサービスは、他社への切り替えコストを理由に随意契約が継続されるケースがあります。
  • 少額案件への対応力:金額基準以下の案件は随意契約が認められやすく、小回りの利く中小企業には機会があります。

一方で、随意契約に受注を依存しすぎると競争の場で実力を証明する機会が減り、新規開拓が難しくなるというリスクもあります。一般競争入札・指名競争入札での実績を積み重ねながら、随意契約は補完的な受注チャネルとして位置づけるのが現実的な戦略です。


よくある質問(FAQ)

随意契約と指名競争入札はどう違いますか?

指名競争入札は、発注機関が複数の事業者を指名したうえで価格や条件を競わせる方式です。一方、随意契約は競争を行わずに特定の1者(または少数)と直接交渉して契約します。指名競争入札では競争そのものは存在しますが、随意契約にはありません。この点で両者は本質的に異なります。

随意契約は違法ではないですか?

随意契約そのものは違法ではありません。法令が定める要件(競争を許さない場合・緊急を要する場合など)を満たしていれば、適法な契約方式です。問題となるのは、要件を満たさないにもかかわらず随意契約を用いる場合や、特定業者への便宜供与を目的とするケースです。適正な手続きと理由の文書化が求められます。

少額案件であれば必ず随意契約にできますか?

金額が基準以下であれば随意契約を選択できる可能性が高まりますが、「基準額以下なら必ず随意契約でなければならない」というわけではありません。少額でも競争入札を実施することは可能ですし、発注機関の方針によっては少額でも競争を優先するケースがあります。随意契約はあくまで「認められる」選択肢の一つです。

随意契約の金額基準は国と地方公共団体で同じですか?

異なります。国の機関は会計法・予算決算及び会計令に基づく基準を適用しますが、地方公共団体は地方自治法施行令の別表第5が定める上限の範囲内で運用額を規程に定めます。上限は団体区分によって異なり運用も自治体ごとに違うため、取引先となる自治体の規程を個別に確認することが重要です。

随意契約の情報はどこで確認できますか?

各機関のホームページで公表されています。国の機関は各省庁の調達情報ページや調達ポータルで契約情報を閲覧できます。地方公共団体の場合は各自治体の入札・契約情報ページを確認してください。随意契約の理由・相手方・金額が一覧で掲載されていることが多く、入札公告との合わせた確認が有効です。入札情報の効率的な探し方はこちらの記事でまとめています。


まとめ

随意契約とは、競争手続きを経ずに特定の相手方と直接契約を結ぶ方式です。①競争を許さない場合、②緊急を要する場合、③競争が不利な場合、④秘密保持が必要な場合の4要件のいずれかを満たす場合に限り適用が認められます。少額案件向けの金額基準も設けられており、工事・製造では400万円以下(国立研究開発法人の例)が目安の一つです。

企業の受注戦略としては、独自技術や継続保守の強みを生かしながら、競争入札の実績も並行して積んでいくことが持続的な受注基盤につながります。

随意契約の知識を押さえたうえで、次のステップとして重要になるのが「どの機関がどんな案件を発注しているか」の継続的な把握です。官公庁・自治体・独立行政法人など調達先は多岐にわたり、それぞれの調達情報を個別に確認していると相当な時間がかかります。

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