電子入札のデメリットとは、ICカードや専用ソフトの導入コスト・操作スキルの習得・システム障害リスクなど、紙の入札にはなかった負担が生じることです。
電子入札は、官公庁の発注案件に参加する際の主流な方法として広く普及しています。移動コストの削減や手続きの透明性向上など多くのメリットがある一方、中小企業の担当者にとっては「初期費用がかかる」「パソコン操作に不安がある」「システムが止まったときが怖い」といった懸念も少なくありません。
この記事では、電子入札のデメリットを6つに整理し、それぞれへの具体的な対策も合わせて解説します。すでに電子入札を検討している方も、これから始める方も、実務に役立つ情報をまとめましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
電子入札とは何か:まず仕組みを押さえる
電子入札とは、インターネットを通じて入札書の提出・開札・結果通知などの手続きをオンラインで完結させる仕組みです。国・都道府県・市区町村などの発注機関が導入を進めており、現在では多くの官公庁案件が電子入札を前提としています。
従来の紙による入札では、担当者が役所に出向いて入札書を手渡しする必要があり、移動コストや業者同士が顔を合わせる機会の多さから手続きの透明性が課題とされてきました。北海道開発局の資料でも、従来方式では人の移動が多く入札参加機会が制約されたり、業者同士の接触機会が多かったりすることが指摘されています。電子入札はそうした課題を解消するために普及してきた仕組みです。
一方で、電子化に伴い新たな課題も生まれています。次のセクションから、具体的なデメリットを一つひとつ見ていきましょう。
デメリット①:初期導入コストが15万〜25万円程度かかる

電子入札で最初に壁となりやすいのが、導入コストです。
電子入札に参加するには、以下の機器・ソフトウェア一式を揃える必要があります。
| 必要なもの | 概要 |
|---|---|
| パソコン本体 | 入札システムの動作要件を満たすもの |
| インターネット接続環境 | 安定した回線が必要 |
| 閲覧用・メール用ソフト | 推奨ブラウザ・メールソフト |
| ウイルス対策ソフト | セキュリティ確保のため必須 |
| ICカード(電子証明書) | 本人確認・電子署名に使用 |
| ICカードリーダー+ドライバ | ICカードをパソコンに認識させる機器 |
| プリンタ | 書類出力用 |
大分県電子入札システムのFAQによると、これらの準備には15万円〜25万円程度がかかるとされています(ICカードは認証局ごとに価格が異なります)。
既存のパソコンや回線が使える場合はコストを抑えられますが、専用のICカードとリーダーは新規購入が必要です。ICカードには有効期限(多くは1〜5年、3年が一般的)があり、更新費用も継続的に発生します。
対策: 複数の認証局(民間の電子証明書発行機関)の費用を比較して選ぶと、ICカード関連の費用を抑えられます。また、すでに他の用途でパソコンや回線を整備している場合は、そちらを流用できないか確認しましょう。電子入札の具体的な始め方については電子入札の始め方を解説した記事も参考にしてください。
デメリット②:パソコン操作スキルの習得が必要
電子入札システムはインターネットを介して利用するため、基本的なパソコン操作スキルが求められます。大分県のFAQでも、電子入札にはパソコンの基本的な操作技能が必要とされ、自治体側がパソコン操作研修を実施するとは限らない旨が案内されています。
具体的に習得が必要なスキルの例は以下の通りです。
- ブラウザの設定変更(セキュリティ・互換表示など)
- ICカードリーダーのドライバインストール
- 電子入札システムへのログイン・操作手順
- 入札書・電子ファイルの作成・添付・送信
- エラー発生時の基本的な対処(ログの確認など)
特に、システムごとに操作画面が異なることも悩みの種です。国・都道府県・市区町村それぞれが異なる電子入札プラットフォームを使っているケースが多く、複数の機関に参加登録している場合は操作方法を複数覚える必要があります。
対策: 発注機関が公開しているマニュアルや操作説明書を事前にダウンロードして通読しておくことが有効です。また、テスト入札(試行参加)を実施している機関も多いため、本番前に練習しておくと安心です。担当者が変わったときのために、操作手順を社内マニュアルとして文書化しておくことも長期的に役立ちます。
デメリット③:システム障害・通信トラブルのリスクがある

電子入札はインターネット回線とシステムに依存するため、障害発生時に入札できなくなるリスクがあります。自社のインターネット回線が切れた場合、パソコンが故障した場合、あるいは発注機関のサーバー側で障害が起きた場合など、原因はさまざまです。
入札には締切時間が設定されており、時間を過ぎると原則として入札書の提出ができません。直前のトラブルで参加できなかった、という事例は実務上ゼロではありません。
対策: 以下のような備えをしておくと、トラブル時のリスクを最小化できます。
- 締切当日ではなく、余裕を持って入札書を送信する(締切の数時間前には完了させる)
- 予備のインターネット回線(モバイルルーターなど)を用意する
- 代替パソコンを準備しておく、または社内で複数台が使える体制を整える
- トラブル発生時の連絡先(発注機関の電子入札窓口)をあらかじめ確認しておく
発注機関側のシステム障害の場合は、機関から案内が出て入札期限が延長されることもあります。いずれにせよ、直前の操作は避けることが最大の対策です。
デメリット④:対面情報が得られず、見積もりに影響することがある
従来の紙の入札では、現場説明会や役所への訪問を通じて担当者と直接やり取りし、書面には載っていない情報を得られることがありました。電子入札が普及してからは、そうした対面の機会が減少しています。
たとえば、工事案件では現地の状況や発注者の意図を担当者から直接確認できると、見積もりの精度が上がります。また、不明点を即座に口頭で確認できるという利点もありました。電子入札中心の環境では、質問は書面(質問書の提出)での対応が基本となるため、やり取りに時間がかかったり、ニュアンスが伝わりにくかったりする場面も出てきます。
対策: 発注機関が設ける「質問受付期間」を活用し、疑問点は期間内に文書で質問を提出しましょう。複数の視点から質問を整理して提出することで、必要な情報を効率的に引き出せます。また、現場説明会が設定されている案件ではできる限り参加することで、対面での情報収集を補えます。
建設工事案件の入札参加には、参加資格の取得も前提となります。経営事項審査(経審)の仕組みや建設業許可と入札の関係についてもあわせて確認しておくと、準備がスムーズになります。
デメリット⑤:ICカードの管理・更新手続きが継続的に発生する

電子入札に使うICカード(電子証明書)には有効期限があります。期限切れのまま入札しようとするとシステムに弾かれてしまうため、定期的な更新手続きが欠かせません。
また、ICカードは代表者または委任を受けた受任者の名義で取得します。名義人(代表者・受任者)が交代した場合は取得し直しが必要ですが、実際に操作する担当者が代わるだけなら再取得は不要です。複数の発注機関に入札参加している場合、ICカードが複数必要になるケースもあります。
さらに、ICカードは物理的に大切に管理する必要があり、紛失・破損した場合は再発行の手間とコストが発生します。
対策: ICカードの有効期限をカレンダーに登録し、期限の2〜3か月前には更新手続きを開始しましょう。担当者の引き継ぎ時には、ICカードの有効期限・管理先・認証局の情報を必ず申し送りに含めるルールを社内で決めておくことが有効です。
デメリット⑥:入札参加資格の取得・更新も別途必要

電子入札のデメリットそのものではありませんが、電子入札に参加するためには発注機関ごとの入札参加資格を取得していることが前提です。資格の取得・更新手続きも別途発生するため、トータルの事務負担は決して小さくありません。
国(各省庁)への物品・役務の入札には「全省庁統一資格」の取得が必要です。自治体発注の案件に参加するには、各自治体への資格登録が別途必要になります。入札参加資格の基本的な仕組みは入札参加資格とは何かを解説した記事で詳しく説明しています。
電子入札のデメリットまとめ:一覧表で整理
| # | デメリット | 主な影響 | 対策の要点 |
|---|---|---|---|
| ① | 初期導入コスト(15万〜25万円程度) | 中小企業には一定の負担 | 認証局の比較・既存設備の流用 |
| ② | 操作スキルの習得が必要 | 担当者の学習コスト | 公式マニュアル・テスト入札を活用 |
| ③ | システム障害・通信トラブルリスク | 締切直前の障害で参加できない可能性 | 早めの送信・予備回線の確保 |
| ④ | 対面情報が得られにくい | 見積もり精度への影響 | 質問受付期間の活用 |
| ⑤ | ICカードの管理・更新が継続発生 | 期限切れ・担当者交代時の手間 | 期限管理の仕組み化・社内ルール化 |
| ⑥ | 入札参加資格の取得も別途必要 | トータルの事務負担増 | 資格取得と電子入札準備を並行して進める |
よくある質問(FAQ)
電子入札の初期費用はどのくらいかかりますか?
パソコン・プリンタ・ICカード・ICカードリーダー・各種ソフトウェアなど一式の準備に、15万円〜25万円程度が目安です(大分県電子入札FAQより)。ICカードの費用は認証局によって異なり、かつ有効期限ごとに更新費用も発生します。既存のパソコンや回線を流用できる場合はコストを抑えられます。
ICカードは1枚で複数の発注機関に使えますか?
対応している認証局のICカードであれば、複数の発注機関の電子入札システムで利用できるケースが多いです。ただし、発注機関によって対応している認証局が異なる場合があるため、参加したい発注機関のシステム要件を事前に確認してください。
システム障害で入札できなかった場合、どうなりますか?
発注機関のサーバー側の障害であれば、機関から案内が発出され入札期限が延長されることがあります。一方、自社のパソコンや回線のトラブルは自己責任とみなされることが多いため、直前に操作せず余裕を持った送信を心がけることが重要です。トラブル時の連絡先(発注機関の電子入札担当窓口)をあらかじめ確認しておきましょう。
電子入札は自治体によって手順が異なりますか?
はい、発注機関によって採用しているシステムが異なるため、操作手順や使用するブラウザの設定、対応している認証局などが変わります。参加を希望する発注機関のホームページに掲載されているマニュアルや操作説明書を、個別に確認することをお勧めします。
電子入札の導入は中小企業でも現実的ですか?
十分に現実的です。初期費用や操作習得に一定のハードルはあるものの、電子入札が主流となっている現在、対応していないと参加できる案件の幅が大きく狭まります。国・自治体とも手続きの案内資料を公開しており、テスト入札の機会も設けられています。デメリットを把握したうえで計画的に準備すれば、中小企業でも十分に対応可能です。
まとめ:デメリットを知ったうえで計画的に準備を進めよう
電子入札の主なデメリットは、初期コスト・操作習得・システム障害リスク・ICカード管理・対面情報の喪失・参加資格の取得の6点です。どれも事前に把握して準備しておけば、大きな障壁にはなりません。
むしろ、電子入札に対応することで参加できる案件の数は格段に増えます。まずは導入に必要なものをリストアップし、費用と工数を見積もることから始めてみましょう。
入札参加資格の取得と電子入札の準備が整ったら、次の課題は「自社に合った案件をどう効率よく探すか」です。国・都道府県・市区町村の発注案件は膨大で、複数のサイトを毎日巡回するだけでも相当な時間がかかります。
業種・地域・キーワードを掛け合わせて必要な案件だけを一覧表示し、新着通知も受け取れる入札情報サービス bidscope を使うと、情報収集にかかる時間を大幅に短縮できます。無料から使い始められますので、電子入札の準備と並行して試してみてはいかがでしょうか。






