最低制限価格とは?目的・算定方法・低入札価格調査制度との違いを徹底解説

最低制限価格 目的・算定方法・低入札調査との違い(サムネイル) 入札の基礎

公共工事の入札で「最低制限価格を下回ったため失格」という結果を受け取り、その仕組みが気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では、最低制限価格の定義から算定方法、低入札価格調査制度との違い、自治体ごとの具体的な運用基準まで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。


最低制限価格とは何かを解説する記事のアイキャッチ画像

最低制限価格とは

最低制限価格とは、公共工事等の入札において粗悪な施工や業務を防ぐため、あらかじめ設定される最低の入札金額のことです。

発注機関が事前に設定したこの金額を下回る入札は、内容を審査することなく一律失格となります。最安値を提示すれば落札できるわけではなく、「設定価格以上の金額で、かつ最も低い入札者が落札」という仕組みです。

この制度は、過度な価格競争による工事品質の低下・下請けへのしわ寄せ・業者の経営悪化を防ぐことを目的としており、主に建設工事や建設コンサルタント業務などに適用されます。横浜市の資料では「工事の適正な履行を確保することを目的とした制度」と明記されています。


最低制限価格と予定価格の違い

最低制限価格を理解するうえで、予定価格との違いを整理しておくことが重要です。

項目予定価格最低制限価格
役割入札の上限となる基準金額入札の下限となる基準金額
超えた場合の扱い超えた入札は無効(失格)下回った入札は一律失格
設定主体発注機関(国・自治体)発注機関(国・自治体)
公表時期開札後に公表(事後公表が原則)開札後に公表(事後公表が原則)
計算の基礎設計図書・積算基準に基づく工事費予定価格を元に一定の係数で算定

予定価格が「発注者が想定する適正な工事費の上限」であるのに対し、最低制限価格は「これ以下では適正な施工・履行が見込めない」という下限ラインです。両者の間に収まる入札金額だけが有効となります。

入札の基本的な仕組みについては、入札とはどういう制度なのかを解説した記事も参考にしてください。


最低制限価格の算定方法

最低制限価格の具体的な計算方法は発注機関ごとに異なりますが、総務省が公表する「低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の概要」に基づき、多くの自治体が類似した算定式を採用しています。

建設工事の算定例(新潟県)

新潟県の建設工事では、以下の算定式が採用されています(令和7年6月1日時点)。

算定式

直接工事費
+ 共通仮設費 × 90/100
+ 現場管理費相当額 × 90/100
+ 一般管理費等 × 68/100
(1万円未満は切り上げ)

上限・下限の設定 – 上限:入札書等比較予定価格 × 92/100 – 下限:入札書等比較予定価格 × 75/100

算定結果が上限を超える場合は上限値に、下限を下回る場合は下限値に丸められます。

建設コンサルタント等業務の算定例(新潟県)

同じく新潟県では、建設コンサルタント等業務について以下のシンプルな算定式が使われています。

最低制限価格 = 入札書等比較予定価格 × 91/100(1万円未満は切り上げ)

適用対象となる金額範囲(新潟県の例)

業務区分対象となる設計額
建設工事400万円超4億円未満(令和7年6月1日改正)
建設コンサルタント等業務200万円超(同改正)

※令和7年6月の改正前は建設工事が「250万円超」、建設コンサルタント等業務が「100万円超」でした。対象範囲の下限が引き上げられた形です。

最低制限価格の算定式と予定価格との関係を示す図解

最低制限価格を下回った場合の扱い

最低制限価格を下回る金額で入札した場合、審査なしで即座に失格となります。これは金額の多寡に関係なく一律の扱いです。

具体的には次のような流れになります。

  1. 開札当日、入札金額を比較
  2. 最低制限価格を下回る入札は失格(無効)として除外
  3. 最低制限価格以上の入札者の中から最低金額の入札者が落札候補に
  4. 落札候補者が2者以上の場合はくじ引きで落札者を決定

「安くすれば必ず有利」という発想は最低制限価格のある案件では通用しません。予定価格の範囲内で、かつ最低制限価格以上の金額を精度よく見積もることが落札への近道です。


低入札価格調査制度との違い

最低制限価格制度と混同されやすいのが低入札価格調査制度です。両者は「安すぎる入札を排除する」という目的は共通していますが、仕組みが大きく異なります。

比較項目最低制限価格制度低入札価格調査制度
失格の判断即失格(審査なし)調査後に判断(即失格ではない)
調査の有無なし履行可能性を調査する
主な適用場面地方公共団体の比較的小規模な工事大規模工事・国の発注案件など
落札の可能性調査基準価格以下は即失格調査後に履行可能と判断されれば落札も可能

低入札価格調査制度では「調査基準価格(低入札調査基準価格)」を設け、それを下回った入札者に対して「本当に工事を適正に完了できるか」を調査します。調査の結果、履行可能と認められれば落札できますが、認められない場合は失格となります。

なお、新潟県では低入札調査基準価格を設定した工事において、数値的失格基準も設けています。入札額が「低入札調査基準価格 − 比較予定価格×4/100(1万円未満は切り上げ)」を下回る場合は、調査を経ずに失格となります。

どちらの制度が適用されるかは発注機関・案件の規模・種別によって異なるため、入札公告・仕様書を必ず確認してください。

最低制限価格制度と低入札価格調査制度の仕組みを比較した図

最低制限価格に関する近年の改正動向

最低制限価格の水準や対象範囲は、近年引き上げ傾向にあります。背景には、資材費・労務費の上昇に加え、ダンピング(不当廉売)による施工品質の低下リスクへの対応強化があります。

代表的な改正事例として、先に紹介した新潟県の例を振り返ると:

  • 建設工事の下限:250万円超 → 400万円超(令和7年6月1日〜)
  • 建設コンサルタント等業務の下限:100万円超 → 200万円超(同)

つまり、以前は最低制限価格の設定対象だった小規模工事が対象外になりました。対象外となった案件では最低価格競争に近い状況になるため、該当する価格帯の案件を狙う際は適用制度の確認が欠かせません。

各自治体の最新の運用基準は、それぞれの発注機関が公表する要領・告示を確認してください。


実務で押さえておくべきポイント

最低制限価格がある入札に参加する際、担当者として注意すべき実務的なポイントをまとめます。

① 公告段階で最低制限価格の有無を確認する

すべての入札に最低制限価格が設定されているわけではありません。入札公告・入札説明書に「最低制限価格を設ける」と明記されているか確認しましょう。

② 算定式・係数を把握しておく

発注機関ごとに係数が異なります。よく利用する自治体の算定ルールを事前に調べ、社内で積算する際の参考にしておくと精度が上がります。

③ 「いくらが最低制限価格か」は開札まで非公表

予定価格と同様、最低制限価格も開札前は非公表が原則です。「このくらいなら確実に下回らない」という感覚値の蓄積が重要になります。

④ 複数案件・複数機関をチェックする習慣をつける

最低制限価格の有無・水準は機関や案件によって異なります。参加予定の案件を効率よく把握するには、発注機関ごとのサイトを日々巡回する手間がかかります。

入札案件の探し方については、入札情報の探し方を解説した記事も参考にしてください。


よくある質問(FAQ)

最低制限価格は事前に知ることができますか?

原則として、最低制限価格は開札後に公表されます。入札前には非公表です。ただし、発注機関が公表している算定式や係数(上限・下限の割合など)をもとに「おおよその範囲」を推定することは可能です。精度の高い積算と過去の落札データ分析が実務上の対策になります。

最低制限価格を下回った場合、再入札の機会はありますか?

最低制限価格を下回った入札は一律失格です。再入札を求められることはなく、最低制限価格以上の入札者の中から落札者が決定されます。全員が下回った場合は入札が不成立となり、改めて入札手続きが行われることがあります。

最低制限価格は物品・役務の調達にも適用されますか?

最低制限価格制度は主に建設工事や建設コンサルタント等業務に適用されるもので、一般的な物品購入や役務調達には適用されないケースが多いです。ただし、発注機関によっては清掃・警備などの業務委託に独自の類似制度を設けている場合もあります。参加する案件の入札公告を必ず確認してください。

低入札価格調査制度と最低制限価格制度は同一案件に同時に適用されますか?

通常、両制度は同一案件に同時適用されません。どちらの制度を採用するかは発注機関が案件ごとに決定します。新潟県のように「低入札調査を経た上で数値的失格基準を設ける」という複合的な運用もありますが、これは両制度の同時適用とは異なります。適用制度は入札公告で確認できます。

最低制限価格が設定されていない入札はどうなりますか?

最低制限価格が設定されていない場合、原則として最も低い金額を入札した者が落札します(最低価格落札方式)。ただし、低入札価格調査制度が適用される場合は、著しく低い入札に対して調査が入ります。技術力や提案内容を評価する総合評価落札方式の場合は、価格だけでなく評価点も落札に影響します。落札の仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。


まとめ

最低制限価格とは、公共工事等の入札において適正な施工・業務履行を守るための下限価格です。要点を整理します。

  • 最低制限価格を下回る入札は審査なしで即失格
  • 予定価格(上限)と最低制限価格(下限)の間に収まる入札のみ有効
  • 算定方法は発注機関ごとに異なり、新潟県では工事費の各構成要素に係数を掛けて算出(上限92%・下限75%の範囲)
  • 低入札価格調査制度とは別制度であり、即失格かどうかが最大の違い
  • 近年は対象範囲の下限が引き上げられる傾向にあり、改正情報の確認が必要

入札参加にあたっては、最低制限価格制度の仕組みを理解したうえで、精度の高い積算と適切な価格設定が求められます。


資格取得や制度理解が進んだら、次のステップは実際の案件を効率よく探すことです。発注機関ごとのサイトを毎日チェックするのは手間がかかり、見落としのリスクもあります。業種・地域・キーワードを組み合わせて一元検索できる入札情報サービス「bidscope」を使えば、毎朝の案件確認を短時間で済ませられます。無料から始められますので、ぜひ一度試してみてください。

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