発注者別評価点(主観点)とは?仕組み・評価項目・格付けへの影響を実務担当者が解説

発注者別評価点 主観点とは サムネイル 実務ノウハウ

建設工事の入札参加資格において、スコアアップのカギを握るのが「発注者別評価点(主観点)」です。経営事項審査(経審)の点数だけでは格付けが決まらず、各発注者が独自に設ける主観点によって最終的な格付等級が左右されるケースは少なくありません。

この記事では、主観点の定義・役割から、横浜市・坂出市の具体的な評価項目・算出方法まで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。認証取得や社会貢献活動がどのように加点につながるかも具体的に示しますので、次の申請サイクルに向けた取り組み計画にそのままお役立てください。


発注者別評価点(主観点)と客観点の合計で格付けが決まる仕組みのフローチャート

発注者別評価点(主観点)とは、発注者が独自に設定する評価加算制度のことです

発注者別評価点(主観点)とは、各発注機関が地域政策や事業方針に合わせて独自に定める入札参加資格の加算評価制度のことです。

経営事項審査で算出される「客観点(総合評定値P点)」が企業の経営規模や技術力を全国共通の基準で数値化するのに対し、主観点は発注者ごとに異なる項目・配点で審査されます。地域への貢献度、各種認証の取得状況、工事成績などが典型的な評価対象です。

国土交通省が公表している資格審査マニュアルでは、発注者別評価点(主観点)について「発注標準(等級ごとの発注規模)に適合する企業を仕分ける(格付)ための役割を有する」と位置づけています。つまり、主観点は単なる加点ボーナスではなく、等級(ランク)を決定する重要な構成要素です。


客観点との違いと、格付けが決まる仕組み

客観点(経審)と主観点の違い

区分根拠内容対象
客観点(総合評定値P点)経営事項審査(国の統一基準)経営規模・技術力・経営状況・社会性全国共通
主観点(発注者別評価点)各発注者が独自に定める基準地域貢献・工事成績・認証取得など発注者ごとに異なる

客観点は経審の結果として国が算出する一方、主観点は各都道府県・市区町村がそれぞれ評価項目と配点を定めます。同じ会社でも、申請先の自治体によって主観点の値が異なることがあります。客観点の算出根拠となる経審の仕組みそのものについては、経営事項審査(経審)とはで詳しく解説しています。

格付点数の決定プロセス

格付点数の計算式と等級区分の図解

横浜市の入札参加資格制度では、格付けの流れが次のように整理されています。

  1. 客観点(経審の総合評定値P点)を取得する
  2. 主観点(発注者別評価点)を算出する
  3. 格付点数 = 客観点 + 主観点
  4. 格付点数を得点順に並べ、等級区分点でA・B・C等に格付けする

格付等級が上がると、受注できる工事の金額上限が上昇します。「経審の点数はもう十分高いのに等級が上がらない」という状況は、主観点が低いことで起きている場合があります。逆に言えば、主観点の積み上げは、経審の改善と並ぶ格付向上の有効な手段です。客観点の点数がどのように等級区分へ反映されるか、格付けの仕組みそのものの詳細は、経営事項審査の点数と格付け一覧で解説しています。


横浜市の主観点:算出式と加算項目を読み解く

基本の算出式

横浜市では、主観点(Ms)を以下の式で算出します(横浜市公式)。

Ms = C(R-65)+ α

  • C:過去4年間に請け負った工事の工種別年間平均請負実績金額に応じた係数
  • R:過去4年間に完成した工事の工種別平均工事成績点
  • α:各種加算・減算項目の合計

「R-65」という表現が示すように、工事成績の基準ラインが65点に設定されており、それを上回れば上回るほどMsが増加する構造です。逆に65点を下回ると、Msはマイナス方向に引っ張られます。

α(加算・減算)の主な内訳

横浜市の発注者別評価点(主観点)算出式と加算項目一覧
評価項目点数
過去2年間に完成した工事のうち工事成績85点以上の工事1件+10点
工事成績65点未満の工事1件-10点
建設業労働災害防止協会への加入+5点
法定雇用率を超える障害者の雇用+5点
男女共同参画に関する一般事業主行動計画の策定・届出+5点

工事成績の影響が非常に大きいことが特徴です。85点以上の優良工事を積み重ねることが、Msを引き上げる最も直接的な方法と言えます。一方、65点未満の工事が1件あるだけで10点減算されるため、品質管理の徹底は主観点の観点からも不可欠です。


坂出市の主観点:地域特性を反映した評価項目の例

香川県坂出市は、平成23・24年度の資格審査より発注者別評価点制度を導入しています(坂出市公式)。対象は市内業者または準市内業者として申請する建設工事業者で、全工種が対象です。

坂出市の主な評価項目と配点

評価項目点数
エコアクション21認証登録5点
ISO14001認証取得5点
ISO9001認証取得5点
建設業労働災害防止協会加入5点
緊急避難所「子どもSOS」プレート設置5点
障がい者雇用5点
市主催の人権研修会等への参加最大5点
子育て支援5点
消防団協力事業所登録5点
坂出市発注工事の工事成績(※)最大15点

(※)工事成績の算出方法:申請業種に対応する工事の平均評定点から65を差し引いた値を加点し、上限15点。これは令和9・10年度の審査から新たに追加される項目です。

坂出市の項目を見ると、環境認証(ISO・エコアクション21)、安全対策(労災防止協会)、防災・地域安全(消防団・子どもSOSプレート)、社会的責任(障がい者雇用・子育て支援)など、地域社会における企業の貢献度を幅広く評価する設計になっています。

「認証取得はコスト面で躊躇していた」という企業も、主観点への影響を踏まえると投資対効果を改めて検討する価値があります。


自治体ごとの独自性:主観点の評価項目はなぜ違うのか

横浜市と坂出市の主観点評価項目の比較表

発注者別評価点が自治体によって異なる最大の理由は、各発注者が地域政策や行政課題に応じて評価軸を自由に設計できる制度設計にあります。

たとえば、防災拠点の整備を重視する自治体では防災協定や消防団協力が評価されやすく、環境施策を重点課題とする自治体ではISO14001やエコアクション21への配点が高くなります。障がい者雇用や子育て支援など、SDGs・社会的責任に関する項目を評価に組み込む自治体も増えています。

このため、複数の自治体に入札参加資格を登録している企業は、各自治体の主観点制度を個別に確認し、取れる加点項目を計画的に取得することが重要です。「一つの認証取得がA市では5点、B市では10点」といったこともあります。

入札の準備全体に関しては、入札に臨む際の実践的なコツもあわせて確認しておくと、格付け戦略の全体像が整理しやすくなります。


主観点を上げるための実践的アプローチ

格付向上を目指す企業が主観点で取れる対策を、優先度別に整理します。

1. 工事成績の向上(最優先)

横浜市の算出式が示すように、多くの自治体で工事成績は主観点の中核です。平均点が65点を超えるほど加点が大きくなり、85点以上の高評価工事を積み上げることで追加加点も得られます。施工品質・安全管理・書類整備の徹底が直接スコアに反映されます。工事成績そのものの評価項目や評定点を上げる具体的な方法は、工事成績評定とはで詳しく解説していますので、あわせて確認してください。

入札で受注した後の施工段階での品質確保が、次の申請サイクルの格付けにも影響することを念頭に置いてください。

2. 各種認証・登録の取得

坂出市の例では、ISO9001・ISO14001・エコアクション21の各5点合計で最大15点を獲得できます。横浜市でも労働災害防止協会加入(5点)が設けられています。一度取得すると複数自治体で効果を発揮する認証もあるため、費用対効果を見積もった上で計画的に取得を進める価値があります。

3. 社会貢献・雇用関連の取り組み

障がい者の法定雇用率超過、男女共同参画行動計画の策定・届出、子育て支援認定など、雇用・労務に関する取り組みは複数の自治体で共通して評価されます。いずれも主観点のためだけでなく、人材確保・企業ブランドの観点でも有効です。

4. 防災・地域安全への参加

消防団協力事業所登録、避難誘導プレートの設置など、比較的低コストで取り組める項目も多くあります。地域との関係構築という本来の目的を持ちながら、主観点の加算にも貢献できます。

5. 申請前の項目確認を怠らない

主観点の評価項目・配点は申請サイクルごとに変更される場合があります(坂出市では令和9・10年度から工事成績項目を追加)。毎回、対象自治体の最新要綱を確認し、取得済みの認証や資料が要件を満たしているか照合する作業を習慣化してください。

失注が続く場合は格付けだけでなく、他の要因も複合的に見直す必要があります。入札の失注対策の記事では、主観点以外の観点からも改善ポイントを整理しています。


よくある質問(FAQ)

主観点は経審の結果に含まれますか?

含まれません。経審(経営事項審査)の総合評定値(P点)は「客観点」であり、国が定めた統一基準で算出されます。主観点(発注者別評価点)は各発注者が独自に設定するもので、経審とは別の審査です。資格申請の際に発注者へ別途申請・届出が必要なケースもあります。

主観点は国の工事(省庁発注)でも設定されていますか?

国(各省庁)の競争参加資格(建設工事)にも発注者別評価点の仕組みはありますが、具体的な評価項目や配点は発注機関ごとに異なります。地方自治体と同様に、申請先ごとの要領・要綱を確認することが必要です。国土交通省の資格審査マニュアルが制度の基本的な考え方を整理していますので、参考にしてください。

工事成績が悪かった場合、主観点はどれくらい下がりますか?

自治体によって異なりますが、横浜市の場合、65点未満の工事が1件あるごとに10点の減算が適用されます。坂出市では平均評定点から65を差し引いた値が加点(マイナスなら減点)となり、プラスの場合は上限15点です。工事成績の低下は、客観点(経審)には直接影響しないものの、主観点を通じて格付けに影響します。施工品質の維持が格付け管理の面でも重要な理由がここにあります。

主観点の申請に必要な書類はどのようなものですか?

評価項目の証明書類(認証の登録証・修了証・登録通知書・行動計画届出書など)を申請時に提出するのが一般的です。必要書類の種類・様式・提出期限は発注者ごとに異なります。申請先の担当窓口または公式ページで最新の要綱・申請書類一式を確認してください。

主観点は総合評価落札方式の「技術評価点」と同じものですか?

異なります。主観点(発注者別評価点)は、入札参加資格の申請時に格付け等級を決定するための指標です。一方、総合評価落札方式の技術評価点は、個々の工事案件の落札者を決定する際に価格と技術力を総合的に評価するもので、役割が異なります。両者を混同しないよう注意が必要です。


まとめ

発注者別評価点(主観点)は、経審の客観点と合算して格付等級を決定する重要な指標です。自治体ごとに評価項目・配点が異なるため、申請先ごとの要綱を確認した上で、工事成績の向上・認証取得・社会貢献活動などを計画的に積み上げることが格付向上への近道となります。

横浜市の「Ms=C(R-65)+α」という算出式や、坂出市の10項目にわたる評価リストが示すように、取り組みの内容次第では数十点単位の主観点アップも現実的です。次の申請サイクルを見据えて、今から取り組める項目を洗い出してみてください。

また、格付けが上がっても、案件を見落とさず確実にチェックする仕組みがなければ機会損失につながります。複数の発注機関を横断して入札情報を一元管理できるサービスを活用することで、格付けアップの成果を最大限に引き出せます。bidscopeは、業種・地域・キーワードの複合条件で必要な案件だけを絞り込み、新着案件の自動通知や締切管理まで対応しています。毎朝の情報収集にかかる手間を大幅に削減したい方は、ぜひ一度お試しください。

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